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チェロの歴史


チェロの歴史をたどるには、まずヴァイオリン族(ファミリー)の起源を探らなければいけないでしょう。
 ヴァイオリン族、すなわち羊の腸で弦を張り、馬の尻尾の毛に松やにをぬって引掻いて音を出すという擦弦楽器は、やはり中央アジアに起源を発しているように思われます。いまでも、中国の胡弓などとして残っていますが、これにつてはまた他にエジプトからだとか、インド、アラビヤ説があります。どの地方にもそれを証明するような楽器が残っていますが、私は何となく「中央アジア騎馬民族から」端を発したのではないかと考えています。これについては、極端に資料が少ないので、時代とともに新しい発見があるかもしれませんね。
そしてこの擦弦楽器がヨーロッパへたどり着いて、かろうじて歴史に現れてくるのが、12世紀後半から13世紀にかけてのことです。たくさんの絵画や彫刻などにあらわれてくるのは、15、16世紀になってからです。


初期の弦楽四重奏

 人類の誕生当時から、おそらく人間社会には音楽、すなわち歌やリズムがあったと思われます。現代の私たちがいまそう名付けているクラシック音楽という音楽のジャンルの起源は、ヨーロッパのキリスト教会でミサに使われたグレゴリオ聖歌といわれる単旋律です。キリスト教の厳しい規則の中で発展してきたこの音楽文化は、やがて輪唱(カノン)を生み出し、対旋律(フーガ)が出てきます。それに伴ってひとつの旋律をユニゾンで奏でる、たとえば歌と楽器が同じメロディーを弾くという形態から、協和音の伴奏を付けるという技術が発展してきます。
 そこで上記の写真にみられるようなアンサンブルが生れてくるようになり、メロディーのラインの下にバスや、アルトなどの音のでる楽器が考案されていったのでしょう。
 しかし、よく見るとヴァイオリンはまだあごの下ではなく、チェロもちょっといまのチェロとは形が少し違いますよね。しかもよく見ると指を押さえる指板にギターのようなフレットがついています。これがヴァイオリン族がまだ出てくる前のヴィオール族の「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ(腕のヴィオール)」と「ヴィオラ・ダ・ガンバ(膝のヴィオール)」です。


ヴィオール・ファミリー

 上の写真は左からヴィオラ・バッサ、ヴィオラ・ピッコラ、ヴィオラ・バスタルダ、ヴィオラ・ソプラノ、ヴィオラ・テノール、ヴィオラ・ダモーレ

みんなヴィオール族の派生楽器です。この他にヴィオラ・バッサよりオクターブ低い楽器でヴィオローネという楽器があり、これが今のコントラバスの前身です。
 そしてヴァイオリン族の中でちょうどヴィオラ・ダ・ガンバにあたる音域の楽器が小さなヴィオローネということで「ヴィオロンチーノ」って呼ばれていたのが結局訛って今のヴィオロンチェロVioloncello(現在のチェロの正式名称、略してVc)ってなったらしいです。何だか冗談みたいだけど本当だそうです。
 ヴァイオリン族が世に出てきてからも、まだ19世紀ころまで何十種類もの楽器が考案されて世に出てきました。その中でよく名前の聞くものにシューベルトがその楽器のために書いた五弦チェロの「アルペジォーネ」という楽器があります。


 また弓も現在の形になるまでにたくさんの変化を遂げています。


弓の変化1620〜1790年

 前出のヴィオールを弾く四人の写真では本当に狩に使う弓のような弓で演奏されているが、1700年代の後半にほぼ現在のかたちが出来ました。この後フランスのトルテ(1747-1833)によって現在の形が完成され、以来約200年間維持されています。


 しかし殆ど時代を同じくして、ちょうどこのころ(ヴィオール族の全盛期)ヴァイオリンが考案されて登場してきます。このヴァイオリン族に現代の私たちにおなじみのヴァイオリンヴィオラ我らがチェロ、そしてコントラバスが含まれます。


ニコラ・アマティのチェロ


 ヴァイオリン族とヴィオール族の相違をあげるとするならば、

  • ・ 楽器を4種類に統一したこと。
  • ・ 弦を4本にしたこと。
  • ・ 形を統一して、力学的にうすい木の板で弦の強い張力に耐えられる形態を作りあげたこと。
  • ・ 表板の響口をCの字からfの字にかえたこと。
  • ・ 駒のカーブを急にして各弦の特徴をきわだたせたこと。
  • ・ 裏板にも膨らみを持たせ広い範囲の共鳴を得るようにできたこと。

 などがあげられますが、私が考えるところのヴァイオリン族の最大の特徴であり、天才的アイデアは魂柱(サウンド・ポスト)だと思います。何と言っても「魂柱」の発明は馬車にエンジンを積み込んで、自動車にしたような画期的な発明です。(これのおかげで音が倍増するのです。)また、前記に楽器を4種類に統一したとの記載をしましたが、厳密にいえば「4つに淘汰された」という言い方が正しいでしょう。
 このヴァイオリン族の出現でヴィオール族は一時衰退していきます。ヴィオール族は繊細で甘い音のする素晴らしい楽器ですが、ヴァイオリン族のきらびやかで圧倒的に大きな音量、その広い音域に対抗するのはなかなか難しいことでした。ただ今日ヴィオールの美しさが再評価され、当時の楽器だけでなく新作として数多くのヴィオールが作られ演奏されています。


 さて、最初のチェロは、ガスパロ・ディ・ベルティロッティ(1542-1619)という人が作りました。一般には北イタリアのサロという町に住んでいたので、清水の次郎長みたいにガスバロ・ダ・サロって呼ばれてます。それから有名なのが、イタリアのクレモナという町のニコラ・アマティ(1596-1684)そしてその弟子のアントニオ・ストラディバリ(1644-1737)です。(ちなにみこのホームページで紹介されている三戸素子のヴァイオリンはニコラ・アマティの1675年作で、ヴァイオリンの名手パガニーニが所有していたものです。)
 それから、他のチェロの名工はガルネリ一族(当時は日本の窯元のようにその一族、また何代にもわたって楽器が作られた。)ルジェリ、またガダニーニ(私のチェロ)やベルゴンツィ、モンタニアーナ、グランツィーノ、テストーレ、ガリアーノ他があげられます。またこの他にも現代に至るまで数々の名工が素晴らしいチェロを残しています。


参考文献

William Pleeth "Cello" Yehudi Memuhin Music Guides
"標準音楽辞典" 音楽之友社
Julius Bachi "Beruhmte Cellisten"